はじめに / 免疫とは / 自律神経免疫学とは / 現在のがん治療と治癒 / 発熱の役割 / ハイパーサーミアとは / 熱ショック・タンパク質 / 入浴を健康維持・病気の予防に
免疫とは異物(外来・自己に限らず抗原とも言います)を認識し、生体から速やかに排除する大切な仕組みです。このため、私たちは簡単には病気に罹らないようになっていますし、仮に罹っても治り、それ以降同じ抗原性のウイルス性感染症には罹りにくくなります。原虫、細菌やウイルスなどの外来性の病原体はもとより、自殺(アポトーシス)した細胞、ウイルス感染細胞、がん(腫瘍)細胞など不要な自己の細胞もマクロファージやリンパ球を始め種々の免疫細胞(血液中では白血球)によって認識され排除されます。免疫は日々数万から百万個というがん細胞の芽を排除し続けていると言われています。人の総細胞数は約60兆個と言われていますが、免疫系の細胞総数は約2兆個、およそ3.3%が生体防衛を担当しています。その免疫の中心を担っているのが白血球、特にリンパ球です。血液を特殊な溶液に重ねて、遠心すると中間層に白い白血球のバンドが見えます。そこには顆粒球(多数派の好中球、好酸球、好塩基球の総称)、リンパ球、単球が含まれています。
免疫学は1960年代にマウスの実験的な皮膚移植における胸腺の重要な役割が分かり、その後胸腺を中心にした免疫学が飛躍的な発展をしました。それまでは免疫学といえば血清学=抗原抗体反応を意味していました。しかし、新しく興った免疫学は主に進化的(脊椎動物の上陸後)に新たに付け加えられた胸腺経由のTリンパ球を中心にした免疫学でした。しかし最近まで個々の遺伝子・分子・細胞の働きばかりにとらわれて、免疫の全体像を見ることが忘れられてきました。また、免疫系は遊走する単独細胞からなるため、コルチゾル、アドレナリンなどの内分泌系のホルモンに影響されるものの、神経系とは切り離された独立したシステムだと長い間考えられてきました。

しかし、1995年頃から新潟大学の安保(あぼ)教授のグループなどの精力的な研究によって、自律神経系と密接な関係があることが解明されました。『白血球の自律神経支配の法則』です。この福田-安保理論とも呼ばれる自律神経免疫学が提唱されてから、病気における免疫の役割の全体像がはっきりしてきました。特にこの理論の登場によって、今まで客観的なデータがなくEBM(実証的医療)ベースでは説明できない、とされてきた鍼や漢方薬などの東洋医学や他の代替医療で言われる「免疫力」が、「顆粒球とリンパ球の割合と実数」という客観的で具体的な臨床検査データの数値としてとらえることができ、発症と治療・治癒のメカニズムをすっきりと説明できるようになりました。なお顆粒球の数、リンパ球の数は、白血球数 X それぞれの割合(%) ÷100で算出され、単位は1マイクロ・リットル(1立方mm)です。