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自律神経免疫学とは

 自律神経は内臓、血管、リンパ節など広く分布している神経で、血液循環、消化・吸収・排泄、内分泌、生殖など生命を維持してゆくとき、生体の様々な機能を無意識的に調節する神経です。交感神経と副交感神経からなり、シーソーのような相互作用を及ぼしつつ働きます。「頑張り、緊張」モードの交感神経は、神経末端と副腎髄質から分泌されるアドレナリンを介して、白血球の中の顆粒球(寿命2〜3日、細菌の感染に備える、54〜60%が理想的)を支配します。もう一方の「消化吸収・排泄のリラックス」モードの副交感神経は、神経末端から分泌されるアセチルコリンを介してリンパ球(寿命1週間以上、35〜41%、2,200-2,800/マイクロ・リッターが理想的)を直接支配することが、安保教授のグループによって明らかにされました。これが自律神経による免疫の支配と呼ばれています。

    

   顆粒球     リンパ球      単球

 顆粒球(好中球が主)は骨髄で造られ、末梢血に入りますが、細胞核は分葉しており、すでに死(アポトーシス)につつあります。細胞質内にはミトコンドリアも豊富です。原始的アメーバー様のマクロファージから細菌類を飲み込んで処理することに特化した細胞です。しかし、進化の歴史から見れば、かなり新しい細胞です。魚類から両生類、爬虫類への生物進化の過程で大いに発達しました。それは陸上で活発に運動することと、水分の再吸収のために大腸が発達したことから、外傷や大腸に住みつく細菌感染から体を守る大切な役割を持つからです。しかも、酸素呼吸によって必然的に生み出される有害な活性酸素を逆手に取って、細菌と戦う武器にしています。しかし同時に、負の面も持ち合わせています。長時間労働、悩みなど心身のストレスが多い現代社会では、交感神経・顆粒球過剰の状態が数ヶ月・数年と長期間持続しがちです。過剰な顆粒球は、わずか数日の寿命がきて死滅する際、消化管粘膜やそれ以外のところで大量の活性酸素とエラスターゼなどの酵素をばらまきながら死にます。その数は計算上10の10乗つまり100億個もの顆粒球が毎日死滅し、およそ10グラムの重さに相当しますから、大変な量です。

 大量の活性酸素(フリーラジカル)放出の結果、潰瘍などの組織破壊、血流障害、分裂上皮細胞の過度の再生促進、遺伝子DNAの変異などをきたし、消化器潰瘍、肩こり、リウマチ、糖尿病、高血圧、梗塞、歯周病、便秘、痔などを発症します。こういった状態が5年10年と継続すると、がんが発生します。同時に起こる副交感神経抑制によるリンパ球の減少は、免疫力を低下させ、風邪などウイルス性疾患に罹りやすくなり、がん細胞への監視が手薄になります。交感神経優位の状態から脱却するには、副交感神経を刺激して局所での血流を亢進するプロスタグランディン産生を促し血管を拡張して治癒に導くことができます。しかし、現代西洋医学ではプロスタグランディンがもたらす一時的な腫れ、痛み、粘液分泌亢進、熱などの治癒反応を不快な症状として治療の対象にしてきました。長期の鎮痛剤、ステロイド剤の使用はプロスタグランディンの合成を阻害や酸化ステロイドの沈着をもたらし、一向に治癒が見えてこない悪循環を招いています。

 また、胸腺経由のリンパ球が中心の新しい免疫は主に外来の異物に向けて働くのに対し、安保教授のグループは肝臓や腸管など胸腺以外で生成・分化する古いタイプのTリンパ球(胸腺外分化T細胞)の存在を初めて証明し、ストレス、加齢、ステロイドの投薬などで胸腺が萎縮した際、進化した免疫の主役である胸腺経由のTリンパ球に代わって、体内の異常になった自己細胞(がん細胞、老化細胞、ウイルス感染など)の排除を担う役割を見いだしました。難病を理解する上で、この古い免疫の存在と、新しい免疫との役割分担を理解することが大切です。

 すなわち、消炎鎮痛剤やステロイド剤の長期にわたる使用は、激しい交感神経刺激過剰、酸化ステロイドの沈着、胸腺の萎縮による新しい免疫の抑制状態をもたらし、重症アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの医原性の難治性疾患・いわゆる「自己免疫性疾患」を生み出しています。古い免疫によって自己抗体などが証明されるため、現代医学では免疫亢進状態と判断し、更に追い討ちをかけるように消炎鎮痛剤やステロイド剤を処方します。この悪循環を断ち切るためには、心身のストレスを除き、これらの薬剤の使用を止め、睡眠や栄養を十分摂り、副交感神経を適度に刺激し、リンパ球の数と機能を高めて免疫系のバランスをとることは難病から脱却し健康を維持するうえで非常に重要なことです。逆に割合としては少ないのですが、副交感神経過剰が過度に持続した場合は鬱病、アレルギー疾患、むくみなど発病します。ですから、普段の生活で健康を保つためには、適当な緊張と十分な休養というメリハリのある生活をすることが重要だと指摘しています。