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ハイパーサーミア Hyperthermia とは

 

日常的にお風呂に入って暖まること、温泉地に湯治行くこと、カイロを使うこと、これらは物理的に体を温めるという広い意味では温熱療法に当たります。しかし医学で言う狭い意味の温熱療法とは「高体温を全身もしくは一部に人為的に誘導する治療法」で、主にがんの治療を目的とする方法です。英語ではハイパーサーミアと呼ばれています。

 日本では今から15〜20年前に体外循環法を用いた全身温熱療法などのブームがありましたが、血液を直接46℃もの高温に加温するには無理がありましたし、当時の温度計測およびコントロール技術では目標とする温度と維持時間(核心温で42℃、2時間)を達成するのが困難でした。しかも、当時の温熱療法の根本的な考え方はがん細胞を「熱で焼き尽くす」でした。しかも、今だにハイパーサーミア研究者・臨床医の主流は、放射線や抗がん剤と併用する「焼き尽くす」の考え方に囚われています。確かに悪性黒色腫(メラノーマ)など比較的易熱性のがんもありますが、高すぎる温度は免疫細胞にも有害です。必ずしも「焼き尽くす」のではなく、熱による免疫系の活性化の方がより重要である考えています。そのため、マイルドな加温が適切ではないかと、私たちは考えています。この温度は自律神経に揺さぶりをかけ、加温中熱ストレスで一時的に交感神経を緊張させますが、治療後翌日からにその反動(リバウンド反応)として次に副交感神経の優位をもたらします。

 局所や全身を治療温度にまで均一に上げて維持する(41〜43℃で数時間)ことは至難の業でした。マイクロウェーブ、ラジオ波、赤外線、体外循環法による血液加温など、今日まで多くの方法が考案されて実施されてきました。しかし、これらのどの方法も高い侵襲性と正確に治療温度と時間を維持するのに問題を残しております。浸漬方式の全身温熱療法としては、大分医科大学で1983年から悪性腫瘍患者3例に対して温水槽を用いて先駆的な温熱治療が試みられましたが、当時の温度コントロールと測定機器の精度による限界から、浸漬法による全身温熱治療は正当な評価がなされませんでした。しかし、今では正確に温浴槽の溶液の温度をコントロールする機器が開発され、それを使って動物や人体の核心温(直腸温度で代表)を誤差0.1℃の精度で誘導・維持することができるようになりました。

 免疫系は絶えずがん抗原を認識し、一日に数万〜数十万個というがん細胞を排除し続けています。その強力な免疫システムの中心的な役割を演ずるのが白血球の中のリンパ球なのですが、直接抗原分子丸ごとを認識できるのではありません。別の細胞の細胞表面に「マーカー(標識)」として提示された場合に限って、特定のリンパ球がその「マーカー」に接触し、初めて異物かどうか区別することができるのです。ハイパーサーミアにはこの「マーカー」を効率よく誘導できる仕組みがあるのです。

 またインフルエンザ・ウイルスのようにある種のウイルス感染細胞は熱に弱いという性質(易熱性)から、全身温熱療法はがんのみでなく脂質の膜(エンベロープ)を有するRNAウイルスの感染症であるHIV/エイズ、C型肝炎などのウイルス感染症の他、アトピー、リウマチなどの免疫疾患にも効果があると考えられています。特に、人類に脅威をもたらしているエイズの抗レトロウイルス薬のカクテル療法(ハート)に代わる新たな治療法として、可能性を秘めています。なぜなら、熱はリンパ球に潜伏感染しているHIV/エイズウイルスを効率良く再活性化し、免疫による排除と短期間の抗レトロウイルス投薬に対する感受性をもたらし、リンパ節などでウイルスが潜伏感染しているリンパ球のレゼルボア(プール)を効率よく減少して潜伏期の大幅な延長が期待できます。このことが、サルに起源を持つヒトという『新しい宿主』に未だに馴れていないHIV/エイズウイルスの弱毒化を比較的早期(それでも100年レベルが必要か?)にもたらす可能性もあります。

 加温による熱ショック・タンパク質の産生とリンパ球の増加という効果は、数週間以上持続すると考えられ、この間、がんの退縮・排除が期待されます。更にハイパーサーミアをある間隔を置いて複数回繰り返したり、安保教授の「がんを治すための4ヵ条」である心身のストレスを除き生活を見直して鍼や漢方薬、入浴、軽い運動、茸・海草・玄米・小魚・ショウガ・ニンニクなどの摂取、爪もみ、よく笑うことなど実践します。このように副交感神経を積極的に刺激することで、顆粒球の割合と数を減少させ、逆にリンパ球の割合・数それに機能を高め、血流を良くする体調に導くことで、がんからの生還は本当に実現可能となります。勿論、放射線、抗がん剤、消炎鎮痛剤(選択的COX2阻害剤を除く)、ステロイドの長期間使用はリンパ球を抑制し、体を消耗させるので、原則的に併用しません。つまり、「新しい」温熱療法は自律神経免疫療法と有機的に組み合わせることによってその真価を発揮し、相加的・相乗的に治癒に導くことができると思われます。